ローム【簡易版:非会員用】

最終更新日:2026年7月17日
著者:武山益嘉
証券コード:6963

結論

ロームは、日本が強みを残すパワー半導体、アナログLSI、電子部品を作る会社である。AIサーバー、車載、産業機器では、電気をむだなく変換し、安定して届ける部品が増える。生成AIが広がるほど、ロームの製品が使われる機会は増えやすい。この意味で、会社の事業は高いAI耐性を持つ。

しかし、現在のロームは安定成長期にはない。SiCへの先行投資が需要の伸びを上回り、2026年3月期には1,936億円の減損損失を計上した。国内製造会社の組み替えに加え、東芝デバイス&ストレージの半導体事業、三菱電機のパワーデバイス事業との統合協議も進む。技術の行き先だけでなく、投資、工場、在庫、人の配置を立て直せるかを見るべき会社である。

文系社員にとって大切なのは、京都の有名メーカーに入ることだけではない。どの製品と顧客を持ち、売上、利益、価格、在庫、調達、供給のどの数字に責任を負うかである。技術者と顧客、工場と販売、投資と回収をつなぐ仕事に入れれば、ロームでの経験は自分の力として残りやすい。

判断項目評価読み取り
事業のAI耐性強いAIサーバーの電源、車載、工場自動化で使う半導体を持つ
日本のモノづくりとの結び付き強いパワー半導体、アナログLSI、電子部品が中心である
足元の収益力回復途上2026年3月期の営業利益率は2.3%にとどまった
文系採用の間口狭い2025年入社実績は営業・管理系15人である
再編の影響大きい製造会社再編と他社半導体事業との統合協議が重なる

1.ロームは何を作る会社か

ローム株式会社は、京都に本社を置く電子部品・半導体メーカーである。純粋持株会社ではなく、上場するローム株式会社そのものが、研究開発、商品設計、営業、品質、事業管理などを担う。

主な製品は、電源やモーターを制御するLSI、SiCやMOSFETなどの半導体素子、複数の部品を組み合わせたモジュール、抵抗器などである。2026年3月期は、LSIと半導体素子で売上高の約9割を占めた。

事業区分2026年3月期売上高構成比仕事を見るときの要点
LSI2,184億円45.4%顧客の製品設計へ入り、長い評価を経て採用を取る
半導体素子2,052億円42.7%工場の稼働率、材料費、歩留まり、価格が利益を動かす
モジュール316億円6.6%顧客用途に合わせた設計と安定供給が要る
その他259億円5.4%大量生産、品質、原価の積み重ねが大切である

市場別では、自動車向けが2,368億円で、売上高の49.2%を占めた。ロームの会社全体は、車載需要とSiC事業の立て直しから強く影響を受ける。一方、コンピュータ&ストレージ向けは593億円であり、AIサーバー需要を取り込む入口になっている。

2.売上が戻っても、会社はまだ回復途上である

決算期売上高営業利益親会社株主帰属利益
2023年3月期5,079億円923億円804億円
2024年3月期4,678億円433億円540億円
2025年3月期4,485億円▲401億円▲501億円
2026年3月期4,811億円109億円▲1,584億円
2027年3月期会社計画5,100億円300億円290億円

2026年3月期は売上高が4,811億円へ戻り、営業損益も黒字になった。しかし、営業利益率は2.3%であり、2023年3月期の18.2%には遠い。さらに、SiC関連資産を中心に1,936億円の減損損失を計上したため、最終損益は1,584億円の赤字になった。

2027年3月期は営業利益300億円を計画する。ただし、増益要因のうち154億円は減価償却費の減少である。減損後に資産の帳簿価額が下がった影響が大きく、売上の伸びと原価改善だけで利益が戻るわけではない。

ロームは第1期中期経営計画の5年間で、設備へ累計6,082億円を投じた。第2期計画では、3年間の設備投資を約1,500億円へ抑え、受注の確度を見て投資する方針へ切り替える。今後は売上規模よりも、半導体素子の採算、設備稼働率、歩留まり、在庫、販売価格を見た方がよい。

3.SiCは失敗したのか

SiCは、炭化ケイ素を使うパワー半導体である。高い電圧と温度に耐え、電力損失を減らしやすいため、電気自動車、急速充電器、産業用電源、データセンターなどで使われる。

ロームが誤ったのは、SiCという技術を選んだことより、市場の伸びを上回る速さで設備を増やしたことである。電気自動車市場の伸びが想定より鈍り、中国メーカーが価格を下げ、6インチSiC基板も供給過多になった。受注より先に工場と設備を増やしたため、投資回収が難しくなった。

論点起きたことこれから見る数字
電気自動車需要BEVの伸びが計画を下回った車種別採用、量産開始、年間搭載額
生産能力顧客受注より先に能力を増やした設備稼働率、8インチ移行、歩留まり
中国市場現地メーカーの値下げで競争が厳しくなった採用件数、平均販売価格、原価差
基板外販供給過多で6インチ基板の外販売上が縮んだ外販比率、自社消費、在庫月数

SiC市場が消えたわけではない。電気自動車、工場設備、再生可能エネルギー、AIデータセンターでは、電力損失を下げる必要が続く。技術開発、量産歩留まり、顧客採用の三つをそろえ、適切な価格で十分な数量を売れるかが立て直しの分かれ目になる。

4.AI需要は取り込めているか

ロームはGPUやAI向けメモリーを作る会社ではない。AIサーバーへ電気を送り、電圧を変え、停電時にも動かすためのパワー半導体と電源制御ICを売る。

ロームは、NVIDIAが進める800Vの電源構想への協力を公表した。村田製作所グループのAIサーバー向け電源にはGaN製品が採用され、AIサーバー向けバックアップ電源にはSiC MOSFETが採用された。2027年3月期のコンピュータ&ストレージ向け売上は711億円を計画する。

ただし、711億円にはAI以外のサーバーやストレージも含まれる。NVIDIAとの協力も、確定した大型受注と同じではない。AI需要は実際に取り込み始めているが、車載SiCの過大投資をすぐに埋めるほどの柱になったとは、まだ確認できない。

5.ローム本体と製造会社は分けて見る

国内製造の主な形

ローム株式会社
研究開発・商品設計・営業・品質・事業管理

ローム・デバイス マニュファクチャリング株式会社(RDM)
半導体の前工程

ローム・アッセンブリ マニュファクチャリング株式会社(RAM)
組立、封止、検査などの後工程

ロームは持株会社ではないため、会社全体の主語はローム株式会社でよい。しかし、製造の仕事へ応募する場合は、ローム本体とRDM、RAMを混ぜてはいけない。採用法人、雇用法人、仕事、勤務地、処遇、その後の異動は同じとは限らない。

2026年4月、国内製造会社は前工程のRDMと後工程のRAMへ組み替えられた。さらに、東芝デバイス&ストレージの半導体事業、三菱電機のパワーデバイス事業との統合協議も進む。統合はまだ決まっていないが、実現すれば、営業、開発、生産、経理、法務、人事、ITで仕事の重なりが出る可能性がある。

6.文系社員は、どこで力を残せるか

2025年入社実績は、技術系124人に対し、営業・管理系は15人だった。文系の席は多くない。営業、生産管理、調達・SCM、経理、法務、知的財産、人事などへ分かれるため、初期配属の影響は大きい。

文系社員が力を残しやすいのは、技術者と顧客、工場と販売、投資と回収をつなぐ仕事である。営業であれば、担当売上、粗利益、新規採用製品、量産予定額、価格交渉を持つ。SCMや調達であれば、在庫、納期、購入額、原価削減、供給停止を避けた実績を持つ。経理や事業管理であれば、設備投資、事業損益、在庫評価、投資回収を扱う。

一方、受発注入力、資料作り、会議調整、数字の取りまとめだけを続ける仕事は、生成AIや基幹システムによって減りやすい。会社の事業はAIに強くても、社員個人の仕事まで自動的に守られるわけではない。

7.簡易版としての判断

ロームは、日本が強みを残す半導体・電子部品のモノづくりを担い、AIが広がるほど製品需要が増える可能性を持つ。SiCへの過大投資は大きな失敗だったが、パワー半導体、アナログLSI、電源制御の行き先まで失われたわけではない。

応募を考えるなら、ロームという会社名だけで決めず、どの法人に雇われ、どの製品、顧客、職種、勤務地を持つのかを確かめる必要がある。顧客、製品、売上、利益、在庫、供給のいずれかに責任を持てる配属であれば、文系社員にも長く生かせる仕事が残る。

無料版で読めるのは、ここまでです。

無料版では、ロームの主な事業、SiC減損の理由、AI需要の取り込み、ローム本体と国内製造会社の違い、文系社員が持つべき仕事の入口まで整理しました。

しかし、営業・SCM・調達・経理・法務など職種ごとの担当数字、初期配属の分かれ方、給与と評価、勤務地と現場負荷、3年後・5年後・10年後・40代以降、社内で担える役割、会社固有の逆質問までは、無料版だけでは判断しきれません。

フル版レポートでは、直近5年間の業績と設備投資、SiC再建計画、AIサーバー向け事業、東芝・三菱電機との統合協議、文系職種別の経験、年代別の道、競合比較、面接で確認する具体的な質問まで詳しく分析しています。

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引用元・参照資料

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