結論――通常は村田製作所。半導体へ深く入りたい人にはロームという選び方がある
ロームと村田製作所は、どちらも京都を地盤とし、自動車、通信機器、産業機器、AIサーバーへ部品を供給する。しかし、会社の収益力、主力事業、入社後に任されやすい仕事はかなり違う。
このレポートの読者である貴方が二社から内定を得て、特別な希望がまだないなら、私は村田製作所を勧める。2026年3月期の営業利益率は、村田製作所が15.4%、ロームが2.3%である。単体の平均年間給与も、村田製作所の838万2,000円が、ロームの803万5,000円を約34万7,000円上回る。
村田製作所は、MLCCを中心とするコンポーネント事業が利益を稼ぎ、AIサーバー、車載、通信、産業機器へ顧客と用途が広がる。営業、SCM、調達、企画で、顧客の設計採用、工場の供給能力、在庫、設備投資をつなぐ仕事を任されやすい。
一方、ロームは、SiC、GaN、アナログLSI、電源制御ICなど、半導体と電力変換へ深く入る会社である。AIサーバーの電源、車載インバーター、産業機器の電力制御など、担当したい製品がはっきりしている人には、ロームを選ぶ意味がある。
ただし、ロームはSiCを中心に1,936億円の減損損失を計上し、半導体素子部門は2026年3月期に227億円の赤字だった。東芝デバイス&ストレージの半導体事業、三菱電機のパワーデバイス事業との統合協議も進んでいる。半導体へ深く入れる代わりに、工場、投資、人の配置が動く時期に入る。
武山の視点――会社全体の強さと、配属先の強さを分ける
村田製作所は全社では高収益だが、デバイス・モジュール事業の税引前ROICはマイナス3.5%である。ロームも全社の利益率は低いが、LSIは245億円の利益を出している。会社名だけで決めず、どの事業、製品、職種へ入る可能性があるかを分けて見たい。
| 最初に見る項目 | ローム | 村田製作所 | 読み取り |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期売上高・売上収益 | 4,811億円 | 1兆8,309億円 | 会社規模は村田製作所が大きい |
| 営業利益率 | 2.3% | 15.4% | 足元の収益力は村田製作所が上 |
| 単体平均年間給与 | 803万5,000円 | 838万2,000円 | 村田製作所が約34万7,000円高い |
| 主な仕事の向き | 半導体、電源、車載、工場投資 | 電子部品、世界顧客、工場供給 | 深さはローム、広がりは村田製作所 |
| 通常の判断 | 半導体へ深く入りたい人 | 特別な希望がまだない人 | 村田製作所 |
1.村田製作所は高収益を保ち、ロームは投資の後始末を進めている
ロームは2023年3月期に営業利益率18.2%まで伸びた。その後、顧客の在庫調整、電気自動車市場の伸びの鈍化、SiCへの先行投資が重なり、2025年3月期には営業赤字となった。2026年3月期は黒字へ戻ったが、営業利益率は2.3%にとどまる。
村田製作所も、2022年3月期の営業利益率23.4%からは下がった。それでも2026年3月期は15.4%を保ち、研究開発費1,589億円、設備投資2,478億円を続けている。利益を出しながら、AIサーバー、車載、次世代通信へ資金を入れられる点は大きい。
この差は、若手が任される仕事にも表れる。ロームでは、在庫、設備稼働率、歩留まり、価格を直す仕事が増えやすい。村田製作所では、強い事業への増産と、弱い事業の見直しを同時に進める。どちらも学べることはあるが、通常の就職判断では、多くの仕事を経験し、担当範囲を広げやすい村田製作所を上に置きやすい。
| 見る点 | ローム | 村田製作所 | 入社後への影響 |
|---|---|---|---|
| 利益を稼ぐ部門 | LSIは245億円の利益 | コンポーネント事業の税引前ROICは22.4% | 村田製作所は主力事業の資金回収力が高い |
| 直す部門 | 半導体素子は227億円の赤字 | デバイス・モジュールの税引前ROICはマイナス3.5% | 両社とも配属先の採算を見る必要がある |
| 最大の顧客市場 | 自動車向け49.2% | 通信35.7%、モビリティ25.9% | ロームは車載への集中が高い |
| AIサーバーとの結び付き | SiC、GaN、電源制御IC | MLCC、インダクタ、電源・通信部品 | 電力変換はローム、部品数と供給量は村田製作所 |
| 設備投資の課題 | 今ある設備の稼働と投資回収 | 成長投資と低採算事業の選別 | 再建の重さはロームが大きい |
2.採用人数より、どの職種と事業へ分かれるかを見る
ロームの2025年入社実績は、営業・管理系15人である。村田製作所の2027年入社予定は、事務系総合職30~50人である。時点と実績・予定が違うため、人数だけで間口の広さを決めることはできない。
どちらも、一つの採用区分から営業、SCM・生産管理、調達、経理、人事、法務、ITなどへ分かれる。募集職種に名前があることと、その職種へ毎年配属されることは同じではない。職種別、事業別、勤務地別の配属人数が公表されていないため、面接や条件面談で、直近3年の実績を質問して確かめる必要がある。
村田製作所の総合職は、配属後に約5ヵ月の工場実習がある。製品、工程、品質、供給を学べる仕組みだが、実習先や勤務形態は暮らしにも関わる。ロームは、国内製造会社を前工程のRDMと後工程のRAMへ組み替えたため、本体と製造会社の間で、出向、評価、勤務地がどう決まるかを分けて見る必要がある。
| 採用・配属 | ローム | 村田製作所 | 判断で見ること |
|---|---|---|---|
| 文系系統 | 営業・管理系 | 事務系総合職 | どちらも複数職種を含む |
| 公表人数 | 2025年入社実績15人 | 2027年入社予定30~50人 | 実績と予定を混ぜて順位を付けない |
| 初期配属 | 本人希望、適性、事業上の必要 | 本人希望、適性、能力、会社の必要 | 第1希望が通った割合を見る |
| 工場との関わり | 製造会社、前工程、後工程へ近い | 約5ヵ月の工場実習 | 勤務地、勤務形態、実習後の配属 |
| グループ会社勤務 | RDM、RAM、海外会社 | 国内外の製造子会社、営業会社 | 出向か転籍か、評価者、処遇、戻る実績 |
3.無料版での小結論
通常の就職判断では、村田製作所を上に置く。営業利益率、平均年間給与、主力事業の資金回収力、顧客と工場の広がりを合わせると、入社後に選べる仕事を増やしやすいからである。
しかし、ロームを外してよいわけではない。SiC、GaN、アナログLSI、AIサーバー電源など、半導体と電力変換へ深く入りたい人には、ロームが合う可能性がある。担当製品、職種、勤務地が内定時にある程度見え、設計採用、工場稼働、在庫、投資回収のどれかを担当し、その結果を説明できることが前提となる。
村田製作所も、コンポーネント事業へ入れるとは限らない。デバイス・モジュール事業や本社部門へ入る場合には、製品や顧客を担当し、工場と関わり、数値目標の結果を説明できるかを改めて見る必要がある。
無料版で読めるのは、ここまでです。
無料版レポートでは、通常は村田製作所を優先的に考える理由と、半導体に深く関与したい人にはロームという選び方もあることを示しました。また、村田製作所にも低採算事業があり、ロームにも利益を出すLSI事業があるため、会社全体と配属先を分けて見る必要があることも整理しました。
しかし、この無料版レポートだけでは、営業、SCM・調達、事業管理・経理、人事・法務・ITの各職種で、どちらの会社が上かまでは判断しきれません。勤務地、評価と昇進、3年後・5年後・10年後・40代以降、その後に選べる仕事の問題も残っています。
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引用元・参照資料
- ローム株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」
- ローム株式会社「第68期 有価証券報告書」
- ローム株式会社「第2期中期経営計画 MOVING FORWARD to 2028」
- ローム株式会社「半導体事業の統合に向けた基本合意に関するお知らせ」
- ローム株式会社「新卒採用情報・募集要項」
- 株式会社村田製作所「決算説明会資料・決算短信」
- 株式会社村田製作所「有価証券報告書」
- 株式会社村田製作所「新卒採用 募集要項」
- 株式会社村田製作所「採用FAQ」
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