先に結論を示す。
富士通は、国内の大企業、官公庁、自治体、金融機関、医療機関、防衛、社会インフラの大きなシステムを支えながら、古い仕組みの作り替えと、AIを使った開発工程の見直しを進める会社である。2026年3月期は、連結売上収益3兆5,029億円、調整後営業利益3,906億円、調整後営業利益率11.2%となった。主力のサービスソリューションは、売上収益2兆3,469億円、調整後営業利益3,614億円、利益率15.4%まで伸びている。
しかし、富士通という会社名だけでは、入社後の仕事は分からない。応募者が先に確かめるべきなのは、雇用契約を結ぶ法人、担当する顧客業界、既存システムを守る工程と作り替える工程のどちらに入るか、入社時にどの職務と等級が割り当てられるかである。この四つが、入社後に積める経験を大きく分ける。
応募から配属までの分かれ道
応募する法人を選ぶ
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雇用契約を結ぶ法人を確かめる
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担当する顧客業界を確かめる
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運用・保守・更新と、作り替えのどちらに入るかを確かめる
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入社時の職務、FUJITSU Level、期待される成果を確かめる
1.人は減ったが、利益は増えている
富士通の連結従業員数は、2022年3月末の124,216人から2026年3月末の99,203人へ減った。4年間の減少は25,013人である。一方、調整後営業利益率は2023年3月期の5.8%から、2026年3月期には11.2%へ上がった。
この人員減少を、すべて希望退職や解雇と読むのは誤りである。新光電気工業などが連結から外れた影響、欧州やアジア太平洋での構造改革、事業の分社などが含まれる。ただし、富士通株式会社単体の就業人員も、2025年3月末の34,850人から2026年3月末には32,224人へ減っている。応募者は、グループ全体の人数だけでなく、自分が入る法人と事業の動きを見る必要がある。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 連結売上収益 | 3兆4,769億円 | 3兆5,501億円 | 3兆5,029億円 |
| 調整後営業利益 | 2,653億円 | 3,072億円 | 3,906億円 |
| 調整後営業利益率 | 7.6% | 8.7% | 11.2% |
| 連結従業員数 | 123,527人 | 112,743人 | 99,203人 |
| 富士通株式会社の就業人員 | 35,924人 | 34,850人 | 32,224人 |
| 平均年間給与 (富士通株式会社) | 965万円 | 929万円 | 1,012万円 |
2026年3月期の平均年間給与は10,122,665円で、対象は富士通株式会社の社員である。平均年齢は42.7歳、平均勤続年数は17.6年だった。この数字を富士通Japan、1FINITY、エフサステクノロジーズなどの社員の給与として使ってはいけない。
2.利益の中心はサービス事業である
富士通は、パソコンやサーバを売る会社という昔の姿から、システム構築、クラウド、運用、コンサルティング、モダナイゼーションで利益を稼ぐ会社へ移った。2026年3月期のサービスソリューションは、連結売上収益の約67%を占め、調整後営業利益は3,614億円、利益率は15.4%となった。
| 事業区分 | 2026年3月期の売上収益 | 調整後営業利益 | 主な仕事 |
|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 2兆3,469億円 | 3,614億円 利益率15.4% | コンサルティング、システム構築、クラウド、運用、モダナイゼーション |
| ハードウェアソリューション | 1兆98億円 | 670億円 利益率6.6% | サーバ、ストレージ、ネットワーク、保守 |
| ユビキタスソリューション | 2,298億円 | 388億円 | パソコン関連 |
成長事業として掲げるFujitsu Uvanceの2026年3月期売上収益は7,093億円で、サービスソリューションの約30%に達した。伸びている事業ではあるが、残りの約70%はUvance以外である。富士通へ入れば自動的に新しいDX案件へ入れるわけではなく、既存システムの運用、保守、更新へ配属される可能性も考える必要がある。
3.富士通の「パブリック」には金融が入る
2027年3月期から、富士通はサービスソリューションを「エンタープライズ」と「パブリック」に組み替えた。この区分を、民間企業と公共機関の分け方だと考えると誤る。富士通のパブリックには、官公庁、自治体、防衛、医療に加え、銀行や保険などの金融も入る。
| 富士通の管理区分 | 含まれる主な顧客 | 2026年3月期の売上収益 |
|---|---|---|
| エンタープライズ | 自動車、製造、流通、小売 | 8,663億円 |
| パブリック | 官公庁、自治体、防衛、金融、医療 | 1兆4,806億円 |
したがって、パブリックの利益が大きいからといって、官公庁と自治体だけで利益の大半を稼いでいるとはいえない。金融の大規模システムが含まれるからである。
応募者が確かめるべきなのは、社内区分の名前より、実際に担当する顧客業界である。金融では止めにくい基幹システムと規制対応、官公庁では調達と説明責任、医療では個人情報と現場運用、製造では工場や供給網とのつながりが仕事の中身を変える。
4.富士通の名が付いていても、雇用法人は同じではない
2026年3月末の富士通グループは、富士通株式会社と子会社245社で構成され、うち224社が連結子会社である。採用ページに富士通の名があっても、雇用契約を結ぶ法人、給与を決める法人、実際に働く法人が同じとは限らない。
| 法人 | 主な仕事 | 注意点 |
|---|---|---|
| 富士通株式会社 | コンサルティング、システム構築、クラウド、研究開発、全社機能 | 平均年間給与1,012万円は、この法人の数字である |
| 富士通Japan株式会社 | 自治体、医療、教育など国内向けの構築と運用 | 富士通本体とは別法人である。一部事業の本体への移管も続く |
| 富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ株式会社 | 防衛と安全保障に関わる情報通信システム | 情報の扱い、取引先、働き方が一般の民間案件と違う |
| Ridgelinez株式会社 | 企業変革に関するコンサルティング | 富士通本体のコンサルティング部隊とは別法人である |
| エフサステクノロジーズ株式会社 | サーバ、ストレージの開発、販売、保守 | 2024年に分社した。ハードウェア志望者は本体と混同しない |
| 1FINITY株式会社 | 通信機器、光伝送システムの研究、開発、製造、保守 | 分社時に雇用契約を承継せず、対象社員は富士通から出向した |
1FINITYでは、事業は新会社へ移ったが、対象社員の雇用契約は富士通株式会社に残り、社員は1FINITYへ出向した。これは、雇用法人、実際に働く法人、仕事の指示を受ける法人が分かれる例である。
応募時には、雇用契約の相手、配属先、出向の有無、給与と評価を決める法人を分けて確かめる必要がある。富士通のように事業の分社や本体への移管が続く会社では、入社時と数年後で組織の境目が変わる可能性がある。
5.採用と処遇は職務別へ変わった
富士通は2026年度以降の新卒入社者について、学部卒、修士了といった学歴別の一律初任給をやめ、職務の等級であるFUJITSU Levelに応じて処遇を決める仕組みへ切り替えた。必要な職務ごとに通年で採る方針を掲げており、入社時の仕事が入口の年収へ直接つながる。
会社は、大半の新卒入社者について年収550万円から700万円程度を見込み、高い専門性が必要な職務では1,000万円程度になる場合もあると説明している。職種名だけでなく、入社時のジョブレベル、期待される成果、年収の内訳を確かめる必要がある。
職務別採用には、望まない職種へ回される危険を減らす利点がある。一方、入口の職務をよく分からないまま選ぶと、その仕事の責任と処遇が早い時期から決まる。求人票に書かれた顧客、工程、若手が判断できる範囲まで確認した方がよい。
6.無料版で分かる富士通の主な注意点
富士通は、国内の大企業と社会の基盤を支える仕事を学ぶには有力な会社である。金融、官公庁、自治体、医療、防衛、製造など、止めにくく、関係者が多く、長い期間を要するシステムに関われる。
しかし、入社すれば自動的にAI、コンサルティング、モダナイゼーションへ進めるわけではない。会社の利益は、既存顧客の運用、保守、更新を含む大きな事業の上に成り立つ。どの法人に雇われ、どの顧客と工程へ入るかによって、同じ富士通でも仕事の中身は大きく違う。
富士通を考えやすいのは、一つの顧客業界を長く学び、大きなシステムの品質、移行、顧客説明に関わりたい人である。会社側が配属と異動をすべて決めてくれることを望む人や、会社名だけで先端技術の仕事へ進めると考える人は、慎重に見た方がよい。
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引用元・参照資料
- 富士通株式会社「有価証券報告書 第126期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)」2026年6月26日提出
- 富士通株式会社「2025年度 連結決算概要」2026年4月28日
- 富士通株式会社「2025年度決算概要および中期経営計画の振り返りと今後の方向性」2026年4月28日
- 富士通株式会社「『ジョブ型人材マネジメント』に基づく採用方針について」2025年3月7日
- 富士通株式会社「1FINITY株式会社の新設分割」に関する開示資料
- 富士通株式会社「富士通Japan株式会社との会社分割」に関する開示資料
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