NEC【簡易版:非会員用】―ITサービスへ進むのか、安全保障を支える仕事へ進むのか
先に結論を示す。
NECを、富士通やNTTデータと並ぶ国内大手SIerとしてだけ見ると、会社の半分しか見ていない。NECは、企業、官公庁、自治体、金融機関向けのITサービスに加え、衛星、レーダー、防衛システム、海底ケーブル、通信網まで手がける会社である。
2026年7月の事業区分変更により、この違いが数字の上でもはっきりした。組み替え後の2026年3月期は、ITサービスの売上収益が2兆7,361億円、航空宇宙・防衛が4,784億円、海洋システムが712億円、ネットワークインフラが1,587億円である。ITサービスと航空宇宙・防衛は利益を稼いだが、海洋とネットワークインフラは赤字だった。
私はNECを見るとき、会社名より先に、どの仕事へ入るのかを見る。ITサービスで顧客企業のシステムを作るのか、航空宇宙・防衛で国の安全に関わる長い案件へ入るのか、赤字部門を立て直す仕事へ入るのかで、その後に学べることは大きく違う。NEC本体とグループ会社では、雇用契約、給与、評価、勤務地も同じではない。
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1.NECは「大手SIer」と「安全保障を支える電機会社」が一つになっている
NECの仕事は、大きく二つに分かれる。一つは、官公庁、金融、製造、流通などの顧客へシステム、クラウド、ソフトウェア、保守を提供するITサービスである。もう一つは、衛星、レーダー、指揮通信、海底ケーブル、通信網などを扱う社会インフラである。
ITサービスでは、顧客の業務、予算、要件、納期、システム移行が仕事の中心になる。航空宇宙・防衛では、それに加えて、機密情報、安全性、輸出管理、国との長期契約、試験と納入の責任が重くなる。海洋や通信網では、世界各地の工事、機器調達、工程遅れ、原価の増加も採算を左右する。
| 事業 | 2026年3月期売上収益 | Non-GAAP営業利益 | 仕事の中心 | 入社前に確かめること |
|---|---|---|---|---|
| ITサービス | 2兆7,361億円 | 3,593億円 | システム構築、コンサルティング、クラウド、ソフトウェア、保守 | 顧客業界、新規構築と更新・保守の割合、担当工程 |
| 航空宇宙・防衛 | 4,784億円 | 749億円 | 衛星、レーダー、指揮通信、防衛システム | 勤務地、機密管理、契約期間、品質と納入への責任 |
| 海洋システム | 712億円 | △185億円 | 海底ケーブル、海洋監視、関連システム | 赤字の原因、原価と工程を変えられる範囲、海外出張 |
| ネットワークインフラ | 1,587億円 | △29億円 | 通信網、基地局、光伝送、関連機器とソフトウェア | 製品別採算、通信投資の波、事業再編と配置転換 |
Non-GAAP営業利益は、買収で生じた無形資産の償却、M&A費用、構造改革費用、減損、株式報酬などを除いたNEC独自の利益指標である。事業の稼ぐ力を比べるには便利だが、会計上の営業利益と同じ数字ではない。
2027年3月期の会社予想では、航空宇宙・防衛は売上収益5,250億円、Non-GAAP営業利益770億円を見込む。海洋システムは売上収益1,000億円、営業利益30億円、ネットワークインフラは売上収益1,350億円、営業利益140億円への黒字化を計画している。したがって、社会インフラ採用には、伸びる防衛案件だけでなく、海洋や通信の採算を立て直す仕事も含まれる。
赤字部門へ入ること自体が不利とは限らない。原価をいくら減らしたか、納期を何日縮めたか、品質事故を何件減らしたかを自分の仕事として示せるなら、その経験はあとに残る。しかし、責任だけを負い、価格、人員、工程を変えられないのであれば、仕事は苦しい。求人票や面接では、採った人に何を直してもらうつもりなのかまで確かめたい。
2.利益は増えたが、事業と人員の組み替えも進んだ
NECの連結売上収益は、2022年3月期の3兆141億円から2026年3月期の3兆5,827億円へ増えた。親会社の所有者に帰属する当期利益は1,413億円から2,702億円へ増え、営業活動によるキャッシュ・フローは1,475億円から4,385億円へ伸びた。
一方、連結従業員数は11万7,418人から10万1,800人へ減った。会社を売ったり、連結の範囲を変えたりした分も含むため、1万5,618人がそのまま退職したという意味ではない。しかし、稼ぎの弱い事業を残し続けず、会社と人の置き場を変えてきたことは分かる。
| 決算期 | 連結売上収益 | 親会社所有者帰属利益 | 営業キャッシュ・フロー | 連結従業員数 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 3兆141億円 | 1,413億円 | 1,475億円 | 117,418人 |
| 2024年3月期 | 3兆4,773億円 | 1,495億円 | 2,712億円 | 105,276人 |
| 2025年3月期 | 3兆4,234億円 | 1,752億円 | 3,444億円 | 104,194人 |
| 2026年3月期 | 3兆5,827億円 | 2,702億円 | 4,385億円 | 101,800人 |
2026年3月期の会計上の営業利益は3,599億円、調整後営業利益は3,868億円、Non-GAAP営業利益は3,972億円だった。同じ年度でも利益が三つ並ぶため、資料を読むときは指標名をそろえなければならない。2026年度から事業ごとの中心指標はNon-GAAP営業利益へ変わったため、古い事業区分の調整後営業利益と新しい区分の数字をそのまま並べると誤る。
NEC株式会社単体の2026年3月末の就業人員は2万1,934人である。平均年齢は43.1歳、平均勤続年数は17.3年、平均年間給与は993万9,349円だった。これはNEC株式会社の数字であり、NECソリューションイノベータ、NECフィールディング、NECネッツエスアイなどの社員の給与ではない。
私は、この数字を「NECは大企業だから、入社後の雇用も仕事も変わらない」と安心してよい材料とは読まない。NECは利益を増やしたが、その間に事業を売り、組織を組み替え、子会社をまとめ直してきた。会社全体がもうかっているかだけでなく、自分が入る事業が伸びる側か、立て直す側か、別の会社へまとめられる側かまで見た方がよい。
3.BluStellarは成長の中心だが、国内ITサービスのすべてではない
BluStellarは、顧客の仕事の流れを作り替えるために、コンサルティング、業種別の知識、AI、クラウド、セキュリティ、運用を組み合わせるNECの事業の進め方である。別会社の名前ではなく、BluStellarという一つの職種へまとめて採用されるわけでもない。
2026年3月期のBluStellar売上収益は7,050億円、Non-GAAP営業利益は1,020億円、利益率は14.5%だった。国内ITサービス売上の32%を占める。2027年3月期は売上収益8,400億円、営業利益1,430億円、利益率17.0%を見込む。
| 国内ITサービス | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期予想 | 読み取り |
|---|---|---|---|---|
| BluStellar売上収益 | 5,424億円 | 7,050億円 | 8,400億円 | 伸びているが、採用者全員の配属先ではない |
| BluStellar Non-GAAP営業利益 | 663億円 | 1,020億円 | 1,430億円 | 提案の型とAI利用による生産性向上が前提となる |
| BluStellar利益率 | 12.2% | 14.5% | 17.0% | 人を増やすだけでなく、同じ仕組みを繰り返し使う必要がある |
| ベース事業売上収益 | 1兆5,934億円 | 1兆4,704億円 | 1兆1,950億円 | 既存システムの更新、保守、機器販売などもなお大きい |
NECへ入れば、誰もが顧客の経営課題を扱うコンサルタントやAI案件へ進めるわけではない。実際には、古いシステムの更新、保守、障害対応、契約更新、機器販売も大きな仕事である。これらは社会を止めないために必要だが、担当者が何を変えたかを数字で残しにくい配属もある。
私は、BluStellarという名前だけでは配属先の良し悪しを決めない。顧客の仕事を調べるところから入るのか、提案書だけを作るのか、要件定義、開発、移行、運用まで関わるのかで、身につく仕事は違う。仕事の時間を何時間減らしたか、処理件数をどれだけ増やしたか、移行の遅れや障害をどれだけ抑えたかまで担える部署なら、その後の異動や転職でも話しやすい。
4.同じNECグループでも、採用会社が違えば会社人生も違う
2026年3月末のNECグループには252社の連結子会社がある。採用ページにNECの名が付いていても、雇用契約を結ぶ会社、給与と評価を決める会社、実際に働く場所は同じではない。
2025年7月にはNESICホールディングスが発足し、NECネッツエスアイとNECネクサソリューションズが傘下へ入った。2026年4月にはNECフィールディングも加わった。これらの会社は、ネットワークの構築、地域企業や自治体へのITサービス、機器の保守と運用でつながる。しかし、NEC本体と同じ採用、給与、昇進の仕組みになるわけではない。
| 法人 | 主な仕事 | 本体と混同すると危ない点 |
|---|---|---|
| 日本電気株式会社 | ITサービス、航空宇宙・防衛、海洋、通信網、研究、全社機能 | 平均年間給与993万9,349円は、この法人の数字である |
| NECソリューションイノベータ | システム構築、ソフトウェア開発 | 顧客との要件合意、開発、品質のどこまで担うかを確かめる |
| NECフィールディング | 機器とネットワークの据付、保守、運用 | 2026年4月からNESICホールディングス傘下。地域拠点や当番勤務も見る |
| NECネッツエスアイ | 通信・ICT設備の設計、構築、保守 | 施工、現場管理、通信事業者案件の比重が本体IT営業と違う |
| NECネクサソリューションズ | 中堅・中小企業、自治体向けITサービス | 顧客規模、営業地域、本体との案件分担が違う |
| NECプラットフォームズ | 情報通信機器の開発、製造、販売、保守 | 工場、製品、原価、品質の責任が中心となる |
| アビームコンサルティング | 経営・業務コンサルティング | NEC本体のコンサルタント職とは採用、評価、案件の進め方が違う |
NESICホールディングスの下には、全国300カ所を超えるサービス拠点と、24時間365日の運用・保守の仕組みがある。顧客への提案から導入後の保守まで仕事が広がる一方、夜間や休日の連絡、障害対応、地域拠点での勤務も起こり得る。「グループ内で仕事が広がる」という説明だけでなく、どの会社に雇われ、どこで働き、誰が評価するかを確かめた方がよい。
海外では、NECが2026年5月に米国のCSG Systems Internationalの買収を終え、Netcrackerが統合を担う。通信事業者向けソフトウェアの海外事業は広がるが、日本で採用された社員が何人、どの職種で統合作業や海外案件へ入るかは公開されていない。海外事業を志す人は、赴任や出張の実例を質問する必要がある。
5.新卒採用は「入ってから配属」より「応募時に仕事を選ぶ」仕組みへ変わった
NECは新卒採用で「ジョブマッチング採用」を行っている。部門と職種を内定時に決める採用と、職種を決めてから部門を合わせる採用がある。研究、技術開発、SE、コンサルタント、サービス、生産、知的財産、法務、経理・財務・FP&A、人事などは、応募時から部門と職種の組み合わせを意識する必要がある。
2026年4月実績の参考月給は、学部卒30万円、修士了32万800円、博士了37万9,400円である。NECは、職務と責任で処遇を決めるPay for Jobと、成果や貢献で処遇を決めるPay for Performanceを掲げる。学歴別の入口だけでなく、入社時の職務レベル、賞与の決まり方、次の等級へ進む条件まで見なければ、実際の処遇は分からない。
| 応募時に見る項目 | 公開情報から分かること | なお確かめること |
|---|---|---|
| 部門と職種 | ジョブマッチング採用で応募時から選ぶ | 内定通知書で部門まで確定するか、入社後に変わる余地があるか |
| 仕事の中身 | 営業、SE、コンサルタント、研究、法務などに分かれる | 顧客、案件、工程、新規と保守の割合、若手が決められる範囲 |
| 勤務地 | 田町、玉川、府中、相模原、我孫子、研究所、支社・支店など | 初期勤務地、顧客先勤務、転勤、在宅勤務、夜間作業 |
| 給与 | 学部卒30万円、修士了32万800円、博士了37万9,400円 | 職務レベル、賞与、時間外手当、昇格後の年収 |
| 異動 | 社内公募NEC Growth Careersがある | 希望部署の応募人数、合格人数、異動までの期間 |
社内公募制度のNEC Growth Careersは、2019年度の刷新後、累計応募者が約3,800人、合格者が1,500人を超えた。異動の道は実際にある。しかし、累計値で見ると応募者全員が移れる制度ではない。大型案件の途中では、本人の希望より顧客との契約や引き継ぎが優先されることもある。
望まない配属を避けやすくなった反面、入社を考える側にも、仕事をよく選ぶ責任が増えた。営業、SE、コンサルタントという名前は同じでも、官公庁の長期案件、金融の基幹システム、製造業の仕事の作り替えでは中身がまったく違う。応募するときに顧客と工程まで調べなければ、思っていた仕事から外れる。
6.NECで見落としやすい三つの注意点
会社平均の働き方では、配属先の負荷は分からない
2025年度のNEC株式会社の月平均所定外労働時間は23.8時間、有給休暇取得率は65.1%だった。これは会社全体の平均である。入札前、システム移行、障害対応、衛星や防衛システムの納入前、海底ケーブル工事の遅れなど、部門ごとの繁忙はこの数字に埋もれる。
ITサービスでは、顧客先での作業、夜間のシステム切替、休日の障害対応がある。航空宇宙・防衛では、府中などの事業場、試験設備、機密区域へ通う必要が強く、在宅勤務が使いにくい仕事もある。平均残業時間より、配属予定部署の最長月、夜間作業の回数、休日対応後の休みを確かめる方が役に立つ。
大きな案件へ参加しても、自分の実績が残るとは限らない
NECでは、官公庁、金融、大企業、防衛など、名前の大きな顧客や案件へ関われる。しかし、会議の調整、進捗表の更新、社内承認の資料作成だけで何年も過ぎると、社外で仕事内容を説明しにくい。
大切なのは、案件総額ではなく、自分が何を決めたかである。受注額、粗利、管理予算、工数、障害件数、復旧時間、原価削減額、納期短縮、担当人数のうち、どの数字を任されるのかを見る必要がある。
AIで資料作成は減るが、説明責任は軽くならない
NECは、AIを使って提案書、設計書、コード、試験、監視、問い合わせ対応などの時間を減らそうとしている。BluStellarの利益率向上にも、AIによる生産性の改善が織り込まれている。
減りやすいのは、決められた型へ情報を入れる作業である。顧客が何を変えるか、契約条件をどうするか、AIの出力が正しいか、障害時にどのシステムを先に復旧するかという判断は残る。若手の評価も、作った資料の枚数より、業務時間、工数、障害、案件利益をどれだけ改善したかへ移る。
7.無料版で分かるNECの選び方
| NECを考えやすい人 | 狙う仕事 | 慎重に見た方がよい人 |
|---|---|---|
| 一つの顧客業界を長く学び、大型システムの提案、移行、品質、採算へ関わりたい人 | ITサービスの営業、SE、PM、コンサルタント | NECへ入れば自動的にAIやコンサルティングへ進めると考える人 |
| 航空宇宙、防衛、海洋、通信網の長い案件を担いたい人 | 社会インフラの技術、営業、調達、品質、法務 | 短い期間で製品や職種を次々に変えたい人 |
| 赤字事業の原価、工程、品質、契約を立て直したい人 | 海洋、ネットワークの事業管理、調達、PM、品質 | 決定権がなくても大企業の看板があれば経験になると考える人 |
| 応募時から職種と部門を選び、専門を深めたい人 | ジョブマッチング採用の各職種 | 会社が配属や異動を決めてくれる方が楽だと考える人 |
NECには、国内ITサービスと、国の安全を支える社会インフラの両方がある。とくに航空宇宙・防衛まで就職先の候補に入れる人にとって、富士通やNTTデータとは違う道になる。
しかし、NECという会社名だけでは、入社後の仕事までは分からない。NEC本体かグループ会社か、ITサービスか社会インフラか、利益を稼ぐ事業か立て直し中の事業か、新しく作る仕事か保守・更新かを分けて見たい。
私が応募するなら、内定を受ける前に「過去3年に、この部署の若手が、案件利益、品質、契約変更のどれかを自分の数字として任された例を、人数と案件規模で教えてください」と質問する。大きな案件に加わったというだけでは、5年後、10年後に自分が何をしたのかを話せないからである。
無料版で読めるのは、ここまでです。
無料版では、2026年7月の事業区分変更、ITサービスと航空宇宙・防衛などの違い、海洋とネットワークの赤字、BluStellarの実際の規模、NEC本体とグループ会社の違い、ジョブマッチング採用の仕組みまで整理しました。
しかし、実際に入社するかどうかは、営業、SE、PM、コンサルタント、運用、航空宇宙・防衛、調達・品質、管理部門で評価される数字を分け、勤務地、現場負荷、社内公募、AIの影響、3年後・5年後・10年後・40代以降まで見なければ決め切れません。
会員向けフル版レポートでは、職種ごとに1~3年目と3~5年目の仕事、残すべき売上・利益・品質の数字、AIで減る作業と増える責任、社内で進む道と社外で選べる仕事、NECの面接や条件面談で使う27個の逆質問まで詳しく解説しています。
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引用元・参照資料
- 日本電気株式会社「有価証券報告書 第188期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)」2026年6月18日提出
- 日本電気株式会社「2025年度(26年3月期)通期決算概要」2026年4月28日
- 日本電気株式会社「報告セグメントの変更に関するお知らせ」2026年7月10日
- 日本電気株式会社「2030中期経営計画」2026年5月12日
- 日本電気株式会社「募集要項:新卒採用」
- 日本電気株式会社「マッチングガイド:新卒採用」
- 日本電気株式会社「人材開発:NEC Growth Careers」
- 日本電気株式会社「DX事業のさらなる拡大に向けたグループ再編について」2026年1月29日
- 日本電気株式会社「米国CSG Systems Internationalの買収完了」2026年5月15日
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