結論
ロームは、日本が強みを残すパワー半導体、アナログLSI、電子部品を作る会社である。AIサーバー、車載、産業機器では、電気をむだなく変換し、安定して届ける部品が増える。生成AIが広がるほど、ロームの製品が使われる機会は増えやすい。この意味で、会社の事業は高いAI耐性を持つ。
しかし、現在のロームは安定成長期にはない。SiCへの先行投資が需要の伸びを上回り、2026年3月期には1,936億円の減損損失を計上した。国内製造会社の組み替えに加え、東芝デバイス&ストレージの半導体事業、三菱電機のパワーデバイス事業との統合協議も進む。技術の行き先だけでなく、投資、工場、在庫、人の配置を立て直せるかを見るべき会社である。
文系社員にとって大切なのは、京都の有名メーカーに入ることだけではない。どの製品と顧客を持ち、売上、利益、価格、在庫、調達、供給のどの数字に責任を負うかである。技術者と顧客、工場と販売、投資と回収をつなぐ仕事に入れれば、ロームでの経験は自分の力として残りやすい。
| 判断項目 | 評価 | 読み取り |
|---|---|---|
| 事業のAI耐性 | 強い | AIサーバーの電源、車載、工場自動化で使う半導体を持つ |
| 日本のモノづくりとの結び付き | 強い | パワー半導体、アナログLSI、電子部品が中心である |
| 足元の収益力 | 回復途上 | 2026年3月期の営業利益率は2.3%にとどまった |
| 文系採用の間口 | 狭い | 2025年入社実績は営業・管理系15人である |
| 再編の影響 | 大きい | 製造会社再編と他社半導体事業との統合協議が重なる |
1.ロームは何を作る会社か
ローム株式会社は、京都に本社を置く電子部品・半導体メーカーである。純粋持株会社ではなく、上場するローム株式会社そのものが、研究開発、商品設計、営業、品質、事業管理などを担う。
主な製品は、電源やモーターを制御するLSI、SiCやMOSFETなどの半導体素子、複数の部品を組み合わせたモジュール、抵抗器などである。2026年3月期は、LSIと半導体素子で売上高の約9割を占めた。
| 事業区分 | 2026年3月期売上高 | 構成比 | 仕事を見るときの要点 |
|---|---|---|---|
| LSI | 2,184億円 | 45.4% | 顧客の製品設計へ入り、長い評価を経て採用を取る |
| 半導体素子 | 2,052億円 | 42.7% | 工場の稼働率、材料費、歩留まり、価格が利益を動かす |
| モジュール | 316億円 | 6.6% | 顧客用途に合わせた設計と安定供給が要る |
| その他 | 259億円 | 5.4% | 大量生産、品質、原価の積み重ねが大切である |
市場別では、自動車向けが2,368億円で、売上高の49.2%を占めた。ロームの会社全体は、車載需要とSiC事業の立て直しから強く影響を受ける。一方、コンピュータ&ストレージ向けは593億円であり、AIサーバー需要を取り込む入口になっている。
2.売上が戻っても、会社はまだ回復途上である
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 親会社株主帰属利益 |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 5,079億円 | 923億円 | 804億円 |
| 2024年3月期 | 4,678億円 | 433億円 | 540億円 |
| 2025年3月期 | 4,485億円 | ▲401億円 | ▲501億円 |
| 2026年3月期 | 4,811億円 | 109億円 | ▲1,584億円 |
| 2027年3月期会社計画 | 5,100億円 | 300億円 | 290億円 |
2026年3月期は売上高が4,811億円へ戻り、営業損益も黒字になった。しかし、営業利益率は2.3%であり、2023年3月期の18.2%には遠い。さらに、SiC関連資産を中心に1,936億円の減損損失を計上したため、最終損益は1,584億円の赤字になった。
2027年3月期は営業利益300億円を計画する。ただし、増益要因のうち154億円は減価償却費の減少である。減損後に資産の帳簿価額が下がった影響が大きく、売上の伸びと原価改善だけで利益が戻るわけではない。
ロームは第1期中期経営計画の5年間で、設備へ累計6,082億円を投じた。第2期計画では、3年間の設備投資を約1,500億円へ抑え、受注の確度を見て投資する方針へ切り替える。今後は売上規模よりも、半導体素子の採算、設備稼働率、歩留まり、在庫、販売価格を見た方がよい。
3.SiCは失敗したのか
SiCは、炭化ケイ素を使うパワー半導体である。高い電圧と温度に耐え、電力損失を減らしやすいため、電気自動車、急速充電器、産業用電源、データセンターなどで使われる。
ロームが誤ったのは、SiCという技術を選んだことより、市場の伸びを上回る速さで設備を増やしたことである。電気自動車市場の伸びが想定より鈍り、中国メーカーが価格を下げ、6インチSiC基板も供給過多になった。受注より先に工場と設備を増やしたため、投資回収が難しくなった。
| 論点 | 起きたこと | これから見る数字 |
|---|---|---|
| 電気自動車需要 | BEVの伸びが計画を下回った | 車種別採用、量産開始、年間搭載額 |
| 生産能力 | 顧客受注より先に能力を増やした | 設備稼働率、8インチ移行、歩留まり |
| 中国市場 | 現地メーカーの値下げで競争が厳しくなった | 採用件数、平均販売価格、原価差 |
| 基板外販 | 供給過多で6インチ基板の外販売上が縮んだ | 外販比率、自社消費、在庫月数 |
SiC市場が消えたわけではない。電気自動車、工場設備、再生可能エネルギー、AIデータセンターでは、電力損失を下げる必要が続く。技術開発、量産歩留まり、顧客採用の三つをそろえ、適切な価格で十分な数量を売れるかが立て直しの分かれ目になる。
4.AI需要は取り込めているか
ロームはGPUやAI向けメモリーを作る会社ではない。AIサーバーへ電気を送り、電圧を変え、停電時にも動かすためのパワー半導体と電源制御ICを売る。
ロームは、NVIDIAが進める800Vの電源構想への協力を公表した。村田製作所グループのAIサーバー向け電源にはGaN製品が採用され、AIサーバー向けバックアップ電源にはSiC MOSFETが採用された。2027年3月期のコンピュータ&ストレージ向け売上は711億円を計画する。
ただし、711億円にはAI以外のサーバーやストレージも含まれる。NVIDIAとの協力も、確定した大型受注と同じではない。AI需要は実際に取り込み始めているが、車載SiCの過大投資をすぐに埋めるほどの柱になったとは、まだ確認できない。
5.ローム本体と製造会社は分けて見る
国内製造の主な形
ローム株式会社
研究開発・商品設計・営業・品質・事業管理
↓
ローム・デバイス マニュファクチャリング株式会社(RDM)
半導体の前工程
↓
ローム・アッセンブリ マニュファクチャリング株式会社(RAM)
組立、封止、検査などの後工程
ロームは持株会社ではないため、会社全体の主語はローム株式会社でよい。しかし、製造の仕事へ応募する場合は、ローム本体とRDM、RAMを混ぜてはいけない。採用法人、雇用法人、仕事、勤務地、処遇、その後の異動は同じとは限らない。
2026年4月、国内製造会社は前工程のRDMと後工程のRAMへ組み替えられた。さらに、東芝デバイス&ストレージの半導体事業、三菱電機のパワーデバイス事業との統合協議も進む。統合はまだ決まっていないが、実現すれば、営業、開発、生産、経理、法務、人事、ITで仕事の重なりが出る可能性がある。
6.文系社員は、どこで力を残せるか
2025年入社実績は、技術系124人に対し、営業・管理系は15人だった。文系の席は多くない。営業、生産管理、調達・SCM、経理、法務、知的財産、人事などへ分かれるため、初期配属の影響は大きい。
文系社員が力を残しやすいのは、技術者と顧客、工場と販売、投資と回収をつなぐ仕事である。営業であれば、担当売上、粗利益、新規採用製品、量産予定額、価格交渉を持つ。SCMや調達であれば、在庫、納期、購入額、原価削減、供給停止を避けた実績を持つ。経理や事業管理であれば、設備投資、事業損益、在庫評価、投資回収を扱う。
一方、受発注入力、資料作り、会議調整、数字の取りまとめだけを続ける仕事は、生成AIや基幹システムによって減りやすい。会社の事業はAIに強くても、社員個人の仕事まで自動的に守られるわけではない。
7.簡易版としての判断
ロームは、日本が強みを残す半導体・電子部品のモノづくりを担い、AIが広がるほど製品需要が増える可能性を持つ。SiCへの過大投資は大きな失敗だったが、パワー半導体、アナログLSI、電源制御の行き先まで失われたわけではない。
応募を考えるなら、ロームという会社名だけで決めず、どの法人に雇われ、どの製品、顧客、職種、勤務地を持つのかを確かめる必要がある。顧客、製品、売上、利益、在庫、供給のいずれかに責任を持てる配属であれば、文系社員にも長く生かせる仕事が残る。
無料版で読めるのは、ここまでです。
無料版では、ロームの主な事業、SiC減損の理由、AI需要の取り込み、ローム本体と国内製造会社の違い、文系社員が持つべき仕事の入口まで整理しました。
しかし、営業・SCM・調達・経理・法務など職種ごとの担当数字、初期配属の分かれ方、給与と評価、勤務地と現場負荷、3年後・5年後・10年後・40代以降、社内で担える役割、会社固有の逆質問までは、無料版だけでは判断しきれません。
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引用元・参照資料
- ローム株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」
- ローム株式会社「第68期 有価証券報告書」
- ローム株式会社「第2期中期経営計画 MOVING FORWARD to 2028」
- ローム株式会社「国内製造会社の再編に関するお知らせ」
- ローム株式会社「半導体事業の統合に向けた基本合意に関するお知らせ」
- ローム株式会社「NVIDIAの次世代AIデータセンター向け800V HVDC電源アーキテクチャへの協力」
- ローム株式会社「AIサーバー向け電源へのGaN製品採用」
- ローム株式会社 新卒採用情報・募集要項
免責条項
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