ソフトバンク【簡易版:非会員用】

最終更新日:2026年7月21日
証券コード:9434
著者:武山益嘉

ソフトバンク株式会社を「孫正義氏が創業したソフトウェア会社が、そのまま携帯電話会社になった会社」と見ると、会社の成り立ちを取り違える。

1984年、私が銀行で法人営業をしていたころ、創業から間もないソフトバンクは、パソコン向けソフトウェアの流通を手がけていた。私は資金需要があり、先の伸びも期待できると考え、上司へ訪問を提案した。しかし、上司はソフトウェアという商売自体を重く見ておらず、「興味がない」と取り合わなかった。

当時、銀行のコンピューターは、室温を下げた専用室に置かれ、3~4人のプログラマーが付いていた。私の記憶では、その大きな機械のメモリーは640KBだった。ソフトウェアを全国へ流通させる会社が、後に大きな企業群の起点になるとは、多くの人には思いにくかった時代である。

ただし、その1981年創業の会社は、現在のソフトバンクグループ株式会社につながる。一方、本レポートの対象である上場会社のソフトバンク株式会社は、鉄道通信、日本テレコム、J-フォン、ボーダフォンを経た通信会社が実質上の前身である。グループの創業物語と、雇用契約を結ぶ会社の沿革は分けて読む必要がある。

現在のソフトバンク株式会社は、個人向け通信で大きな継続収入を得ながら、法人ネットワーク、クラウド、AI基盤、LINEヤフー、PayPay、ICT流通へ事業を広げている。会社がAIへ力を入れていることと、入社した人がAIの実務へ入れることは同じではない。ソフトバンクを選ぶときは、会社名より、雇用法人、選考経路、初期配属、出向先を確かめる必要がある。

1.結論――文系新卒には法人向けの仕事をまず勧める

通常の場合、文系新卒には、法人営業、法人サービス企画、事業管理など、顧客企業の回線、クラウド、セキュリティ、AI導入まで扱える仕事を勧める。

法人向けの仕事では、受注額、粗利、拠点数、契約年数、導入後の削減時間などを実績として残しやすい。通信回線を売るだけでなく、顧客の業務、クラウド、認証、セキュリティ、運用まで扱える配属なら、社内でも社外でも次に選べる仕事が広がる。

コンシューマ事業の販売企画や代理店支援も、担当店舗数、販促費、契約、解約、利益を動かせるなら弱い仕事ではない。しかし、会社の施策を店舗へ流し、販売集計と社内調整だけを続ける配属は慎重に考えたい。

希望する仕事有力な入口入社前に確かめること
法人DX、クラウド、セキュリティエンタープライズ事業の営業、技術営業、企画回線販売だけか、要件整理、導入、運用改善まで担当するか
AI導入、AI事業法人統括、AI基盤、SB OAI Japan関連ソフトバンク在籍の出向か、別法人の直接採用か
料金、販売、顧客分析コンシューマ事業の商品・営業企画担当するKPI、店舗・代理店数、商品損益へ関われるか
広告、EC、決済LINEヤフー、PayPayなどの各法人ソフトバンク本体の仕事か、別法人の採用か

ソフトバンクを「通信もAIも金融もできる一社」と考えると、入社後のずれが起きやすい。連結決算には多くの子会社が入るが、給与、評価、異動先は法人ごとに違う。グループの事業が広くても、本人が担う仕事まで広いとは限らない。

2.数字で見るソフトバンク

項目2026年3月期・期末読み方
連結売上高7兆386億8,000万円個人通信だけでなく、法人、流通、メディア・EC、金融を含む
連結営業利益1兆425億7,600万円通信の継続収入が大きな土台となっている
連結従業員数58,432人LINEヤフー、PayPay、SB C&Sなどを含む
ソフトバンク単体従業員数19,150人本体で働く社員数。連結従業員数とは分けて見る
単体平均年間給与871万3,000円賞与と時間外手当を含む提出会社単体の数字
単体平均年齢・勤続年数42.0歳・14.8年創業間もないAI会社ではなく、長い通信事業の歴史がある

平均給与871万円は、ソフトバンク株式会社単体の数字である。LINEヤフー、PayPay、SB C&Sなどへ、そのまま当てはめてはいけない。「ソフトバンクグループ」という言葉だけで処遇を判断すると、雇用法人の違いを見落とす。

2026年3月期は売上高が7兆円を超え、営業利益も1兆円を上回った。会社全体は大きくなっているが、すべての事業が同じように伸びたわけではない。個人向け通信で得た資金を、法人AI、データセンター、決済、広告、ECへ回す形が続いている。

3.何で稼ぐ会社なのか

事業2026年3月期の規模主な仕事配属上の注意
コンシューマ売上高約3兆151億円、セグメント利益約5,508億円携帯電話、固定通信、端末、販売、料金企画利益の中心。販売、代理店、商品企画、設備で仕事が違う
エンタープライズ売上高約1兆29億円、セグメント利益約1,924億円法人通信、クラウド、セキュリティ、AI、IoT本体営業、技術営業、子会社、出向を分ける
ディストリビューション売上高約1兆563億円、セグメント利益約353億円ICT機器、クラウド、SaaSの流通主にSB C&Sが担う別法人の事業
メディア・EC売上高約1兆6,680億円、セグメント利益約2,404億円広告、検索、EC、メディア主な実務はLINEヤフーなど各法人が担う
ファイナンス売上高約4,045億円、セグメント利益約863億円決済、カード、銀行、証券PayPayなど法人ごとの規制と人事制度がある

利益の中心はコンシューマ事業である。個人向け通信は成熟しているが、全社の投資原資を稼ぐ部門であり、料金、販売費、解約、通信品質の管理が続く。

一方、法人向けの仕事では、回線、クラウド、セキュリティ、AIを一つの案件で扱える。大企業の仕事へ入り、受注後の導入と運用改善まで担当できれば、ソフトバンク固有の看板だけに頼らない経験を積みやすい。

4.選考経路で初期配属の確かさが変わる

入口初期配属の決まり方注意点
OPEN選考・総合コース内定期間中に検討され、配属業務は入社後に確定AIや法人を希望しても、初期職種が確約されるとは限らない
OPEN選考・エンジニアコース同じく入社後に配属業務が確定一部はシフト・交替勤務。全国・海外勤務の可能性がある
JOB-MATCHインターン本人と会社の双方が希望すれば、参加職種への初期配属を確約参加しただけで自動的に確約されるわけではない
中途の職種別採用求人票に書かれた部門・職務へ入りやすい出向前提や、別法人の直接採用へ変わる可能性を確認する

新卒OPEN選考では、幅広い仕事へ入れる一方、初期配属を自分だけで決めることはできない。狙う職種が明確なら、JOB-MATCHインターンのように、職場と本人の双方が合意した場合に初期配属を確約できる入口を重く見るべきである。

また、総合職は全国・海外勤務の可能性がある。勤務地を変えられない人は、本社やAI関連の希望だけで応募せず、支社、営業、ネットワーク拠点まで配属範囲を確かめる必要がある。

5.見落としやすい危険

最も大きな危険は、会社全体の成長戦略を、自分の配属予定と同じだと考えることである。

AI、LINEヤフー、PayPay、データセンターに魅力を感じても、ソフトバンク本体からその実務へ自動的に入れるわけではない。AI関連の求人には、ソフトバンク在籍のままSB OAI Japanへ出向するものと、選考中に別法人の直接採用へ変わる可能性があるものがある。

同じAI事業でも、本体在籍の出向と別法人の直接採用では、給与、評価、異動先、事業が計画どおり進まなかった場合の社内の道が変わりうる。雇用条件通知書に書かれる法人を確かめる必要がある。

もう一つの危険は、若いうちに仕事が散ることである。販売、法人、企画、AI、子会社出向と仕事を変えられる会社だが、異動回数が増えただけでは、何を任せられる人か分かりにくくなる。最初の数年で、顧客、受注、粗利、商品損益など、自分の仕事を説明できる数字を一つ得たい。

6.無料版での判断

ソフトバンク株式会社は、通信の安定収益を基に、法人DX、AI基盤、決済、広告、ECへ事業を広げる会社である。通常の場合、文系新卒には、法人向けの営業・企画を有力な入口として勧める。

ただし、会社がAIへ進むことと、本人がAIの仕事へ入ることは別である。OPEN選考とJOB-MATCHで初期配属の確かさが違い、本体採用と子会社採用、出向と直接採用でも雇用条件は変わる。

コンシューマ事業を選ぶなら、販売集計だけでなく、料金、顧客分析、販促費、解約、利益まで扱えるかを見る。エンタープライズ事業を選ぶなら、回線販売だけでなく、クラウド、セキュリティ、AI導入、運用改善まで担当するかを見る必要がある。

無料版で読めるのは、ここまでです。

無料版では、ソフトバンクが通信の利益を基にAI、法人、決済、広告、ECへ広がる会社であること、文系新卒には法人向けの仕事が有力であること、OPEN選考とJOB-MATCHで初期配属の確かさが違うことを示しました。

しかし、無料版だけでは、個人向け営業、法人営業、技術営業、AI、新規事業、管理部門のうち、どの仕事が自分に合うかまでは決め切れません。評価される数字、社内異動の実績、40代以降の仕事、出向後の復帰先も、個別に確かめる必要があります。

フル版レポートでは、主要職種ごとの1~3年目の仕事と残すべき数字、ミッショングレードと評価制度、3年後・5年後・10年後・40代以降、AIで減る作業と増える責任、NTT・KDDI・IIJ・楽天モバイルとの比較、会社固有の逆質問20問を詳しく分析しています。

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引用元・参照資料

免責条項

本レポートは、公開情報、企業の公式資料、採用情報および著者の分析に基づく一般的な就職・転職の判断材料です。特定企業への応募、入社、転職、退職または投資を勧めたり、結果を保証したりするものではありません。制度、組織、採用、勤務地、処遇、業績は変更されることがあります。応募や入社を決める前に、各社の最新の公式情報と個別の労働条件をご確認ください。

本レポートを使用したこと、または使用しなかったことによって発生したいかなる損失に対しても、武山益嘉は、一切、責任を負いません。

著者

武山益嘉。英検1級、証券アナリスト。職業的アナリストとして企業・産業分析に長年従事。


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